
旅の気配が
静かに暮らしを染める
Out of frames / ikkaku vol.1
「何かを飾る」という行為に込められた物語に焦点を当てたikkaku(一角)シリーズ。
自然と生まれた一角にはその人らしい味わいがあり、好きを並べた一角には深堀りしたい魅力がある。
写真や絵、オブジェ、本など、ジャンルを問わず、暮らしの中でふと目が留まるお気に入りの一角について、さまざまな方にお話を伺っていきます。
初回は、フォトグラファーとして第二弾にも参加してくれているSaki Shibataさん。土器や絵、旅先で出逢った石など、日々の中で自然とできあがった一角について語ってくれました。
ここは少し前に旅したヨーロッパで直感的に欲しいと感じて購入したものたちを置いている一角です。
なかでもこの石は大切にしているもの。フィレンツェに行った時に出会った石で、お守りのような存在です。瞑想をしているような、お母さんのお腹の中にいるような人の模様が彫られています。
この石に出会ったのはパリから17時間の深夜バス移動を終えて、フィレンツェの道を歩いていた時のこと。ある場所に急に吸い込まれて。そこには路上で静かに、丁寧に、石を彫り、美しい作品として売っているおじさまがいたんです。少し値段はするけど必ず欲しいと思って、けどどうしても1つに選べなくて、次の日に改めました。 翌日、おじさまに「私に合う石を選んでください」と伝えると「あなた自身が自分に合う石を見て触って選んでください」という言葉が返ってきました。彼が大切にしていることが一瞬で私の中に入ってきて、心がぎゅっとなった。私はもう1日だけ考えることにしました。 そして3日目の朝、ある石の模様がパッと思い浮かんで、すぐに買いに行ったんです。 そのような3日間を経て自分の元にきてくれた、大切なお守りです。
この一角の中には最近日本で出会ったかわいい女の子が突然プレゼントしてくれたとても小さな石を置いていたりも。 よく考えると石に惹かれやすいのかもしれないです。
ここは自然と一角ができた感じ。
ネパールの新聞を下に引いて、自分でつくった土器や描いた絵、宮古島の石、アーティスト大地郎くんの作品、両親と伊勢神宮に行った時に買った石などを置いてます。
自分でも無意識のうちに場所によって飾るものを分けているのが不思議。最近購入したお気に入りのティンシャ(チベット仏教で使われる小さなシンバル状の楽器)もこのあたりに置いてます。なんだか無意識に宗教的なのか、文化的ななにかで一角がわかれていますね。
ふと気付いたのですが写真があると豊かになりますね。
なんかいい。
今までは不思議と部屋に写真を飾る習慣がなかったのですが、FROM SOMEWHEREは既にいろいろな物が置いてあっても、その中に馴染むフレームだから飾りやすい。
自分で初めて撮影したフィルム写真もこういった形で部屋に飾るとすごくうれしい。
この写真の場所(ネパールのグルン族の村)にいるなぁって気持ちになる。
私は人の生活を感じるものに魅力を感じるのかなあ。
直感で選び取られたものたちは、日常の中にあってもどこか遠くの風景や体験を呼び起こしてくれる。飾ること、残すこと、それらすべてが自然な流れで生まれていて、心地よい余白を空間にもたらす。
「旅することは生きること」「旅先では直感で良いと思ったものを買う」と話す彼女の言葉どおり、選び取られたモノたちはどれも、感覚に寄り添ってそこにある。
自然体で暮らす日々が、そのまま一角にあらわれていました。
現在は、肩書きにとらわれず、より自由に自分らしい表現を追求している。
Interviewer&Text: Maico Nishikoji(saicorom Inc.)
Photographer: Nanako Koyama