
日常と創造、
その狭間にある穏やかな空間
Out of frames / ikkaku vol.2
「何かを飾る」という行為に込められた物語に焦点を当てたikkaku(一角)シリーズ。
自然と生まれた一角にはその人らしい味わいがあり、好きを並べた一角には深堀りしたい魅力がある。
写真や絵、オブジェ、本など、ジャンルを問わず、暮らしの中でふと目が留まるお気に入りの一角について、さまざまな方にお話を伺っていきます。
今回お話を伺ったのは、ネイルサロン「ord.」を営むネイリスト・Natsumiさん。サロンと自宅、二つの空間を行き来するなかで、自然と形づくられていった“お気に入りの一角”について語ってくれました。
普段は都心にある自分のネイルサロンでお客さまと向き合っているので、自宅ではできるだけ情報が入ってこないように、シンプルな空間で過ごすようにしています。家の中では、家族とペットとソファに座ってゆっくり過ごすことが多いのですが、この一角は常に視界に入ってくる場所なので、情報量を抑えつつ、好きなものを厳選して置いています。
中でも気に入っているものは木のプレート。旦那さんが余った木材でつくってくれたんです。プレートの上には、硝子作家の友人からもらったオブジェや、お気に入りの香りなどを置いています。あとは、ネイルデザインのインスピレーションになる本も、数ある中からセレクトして飾っています。
幼少期から、不思議と石に惹かれていました。祖母が持っていたジュエリーのカタログの裏に載っていた、誕生石の特集ページをよく見ていたのを覚えています。ネイルの仕事をするようになってからは宝石というよりは自然の風合いが感じられる模様が好きになって、マーブル柄などを集めるようになりました。
これは、海外で開催されている石の見本市を目当てに訪れたときに手に入れたもので、中(写真左下)には、外に置いておくとごちゃっと見えてしまう子どものアクセサリーを収納しています。木の家具が好きなので、全体的な色味も自然と統一されているのかもしれません。
ここの一角のお気に入りポイントは旦那さんがセレクトした家具たちです。そこに私が小物を組み合わせて置いています。家具は大阪のTruck Furnitureというお店で全てセレクトしたものなのですが、無垢板を使っていたり、ファブリックの質感にも味がある特徴がこの空間に合っているなと思っています。
木製でできた立体オセロは友人のおすすめで知りました。置いててもかわいいオブジェになるし、部屋にも馴染んでいるのでずっと飾ってます。子どもも一緒に遊べるし、実は1000円くらいで買えるのでおすすめです。
人形は娘の「おともだち」。一緒に遊んだり寝たりしています。猫を飼っているので、こういった猫グッズも集まってきますね。
サロンでは空間(世界観)をしっかりつくり、自宅ではいかに心地よくいられるかで場所を分けているので気持ちのオンとオフもしっかり切り替えられているんです。空間の使い分けはしているけれど不思議と一貫している世界観はあるかもしれないですね。
自宅はリフォームしてから10年が経ちました。最初の頃は物が多く、空間も落ち着かない時期がありましたが、少しずつ整理を重ねて、ようやく今のかたちに落ち着いたように思います。
実は5年程前にFROM SOMEWHEREが立ち上げられた時、黒いフレームのタイプを購入してサロンで飾らせて頂いていたんです。今日お話ししていて思いましたが、写真を飾るってやっぱりいいですね。暫く自宅には飾っていなかったのですが、床置きにするのもいいし、あまり大きなサイズを置いていなかったところにも、この木のフレームのA4サイズは馴染んでくれるので飾りやすいですね。
家族やペットと過ごす時間の中で選び抜かれた家具やモノの存在が、日常をやさしく支えている。仕事と暮らしを切り替えながらも、どこか通じている世界観。その重なりを見せてくれる一角に凛とした美しさを感じました。
都内ネイルサロン勤務を経て2018年にord.設立
雑誌や広告などのネイルデザインも手がける
Web : https://ord-nail.com/
Instagram : @natsumikadohara
Interviewer&Text: Maico Nishikoji(saicorom Inc.)
Photographer: Nanako Koyama